利き手のはなし

 

先日知人に、「子供に左手をもっと使わせたい。レフティになってもいい。どうすればいい?どんなメリットデメリットがあった?」といったようなことを相談された。

 

私はお箸も文字も刃物もスポーツも全て左なんだけど、生まれつきそうだったから、「どうすれば左利きになれるか?」はわからない。

 

でもアスリートやアーティストといった「はっきりしたメリットを見出す人達」は訓練で習得するようだから、使ってりゃ慣れるんじゃない?と答えた。

 

ちょっと不便なことはあったのかもしれないけど、ユニバーサルデザインやバリアフリーといった概念が浸透する今の生活では、さほど不便さもないのかも。わたしが子供の頃に比べたら、左利き用ツールもいろいろあるしね!

 

ケガや事故、障害等でやむを得ず左手を使いはじめたのなら別だけど、生まれつき左利きだと、カメラのシャッターや駅の改札、急須、コイン投入口、そろばん(超不便)とかも「そういうもんなんだ」って使うから大丈夫。電卓使えば大丈夫w。

 

一体どんな狙いでそんなことをしたいの?と聞くと、脳の発達がどうのこうのと言っていた。左手を(左手も)使ったほうが脳機能の発達に好影響だ、と。

 

私は脳科学的なことはよくわからないけど、お子さんの健やかな発達のための手段として、愛情のひとつのカタチとしていろいろ考えたいのはなんとなくわかる。

 

私があれこれ言うことではないんだけど、ひとつだけ経験として言えるのは「無理をさせないでね」ってことかなー。もしお子さんが喜んで左手を(左手も)使うのならかまわない。だけど少しでも無理をさせてしまうようなら反対だな。親の期待に応えたくてガマンする子もいるだろうから、見逃さないようにねーとだけ伝えた。

 

私は子供の頃、「ぎっちょ(左利きのこと)」とからかわれた。昭和の九州の田舎で、とくに女の子だからと将来を案ずる親心から、私は右手を使うようにしつけられた(利き手の矯正)。食卓でうっかり左手を使うと母から「反対だよ」とか「逆よ!」とか「右でしょ!」と言われたのをぼんやり覚えてる。

 

逆?

反対?

右ってどっち??

お箸持つ手ってドッチーーーーー???

 

って混乱した経験のせいか、今でも咄嗟の左右の判断は苦手だったりする。ま、ヨガの指導でしょっちゅう間違うのは完全に私のスキルの問題です。えへ。

 

で、鉛筆を持つようになると左利きの子の特徴であるミラー文字が私も難なくできた。左右に鉛筆を持って、「ぬ」とか「あ」とかを鏡に写したように反転して同時に書くことができた。字だけでなく、左右非対称なものを同時に書き始めてミラーリングすることができた。ただそれだけなんだけどw。

 

「すごいね」と言ってもらえて嬉しくて、いろいろ書いて見せてたんだけど、そのうち「右手よ、右手」と言われるようになり、やらなくなったらできなくなった。

 

小学校低学年の参観日で、兄と授業がかぶったか何かで、母が授業の後半だけ見に来ることになった。この頃の私は親の前では右手、それ以外は左手といった器用な二重生活を送っていた。右手だとうまく書けないし、時間がかかるし、疲れるから。

 

で、お母さんが授業を見に来るのは途中から・・・と油断した私は、母がすでに観に来てるのに気付かずに左手を使って字を書いていた。ふと母と目があって、「げっ!バレた!」と焦ったのを覚えてる。

 

その後母は先生から、「オタフクコさんはいつも左手で書いてますがなにか?」と言われ、家に帰ってから事情聴取をうけた。

 

だけどいつの間にか両親は何も言わなくなった。お陰で私は家でも学校でも、食卓でも勉強でもスポーツでもなんでも左手を使ってのびのび過ごしてきた。

 

実は同じ頃、私は小学校にあがってるにもかかわらず時々オネショをしていた。夜尿症ってやつ。幼いながらも相当恥ずかしいことだとわかっていて、クヨクヨしてた。

 

寝る前に水分を控えてちゃんとトイレをすませても時々失敗してしまい、パジャマが濡れて目が覚めて、ビックリして冷たくて悲しくて、泣きながら母を起こしてお世話をしてもらった。

 

オネショで両親から怒られたことは一度もないんだけど、兄たちには笑われるし、もう小学生なのに恥ずかしいし、原因もわからないからとても悲しかった。

 

だけどこれもまたいつのまにか気づいたら止まっていた。思い返すと「左手を使ってよし!」とされた時期とオネショSTOPはほぼ一致してる。子供心にストレスだったのかもしれないなーと、大人になってから気付いた。

 

夜尿症は小児神経症のメジャーな症状のひとつで、もしかしたら両親も「こりゃいかん」と思って利き手の矯正を中止したのかもしれない。よかったよかった。

 

小児神経症では夜尿症の他に吃音(どもり)やチックが比較的多く見られる症状で、もちろん利き手の矯正だけが引き起こすわけではない。いろんな原因がもたらす結果の(症状の)ひとつなんだけど、愛情のこもった教育であったとしても何事もほどほどにね・・・といったとこでしょうかね。

 

まあ、ぶっちゃけ「利き手なんかどっちだっていいよ」と私は思ってる。脳の発達への影響なんて実のところわからないと、当のレフティは思ってる。

 

手や腕の日常使いって大事なんだろうけど、身体機能が脳の発達に与える影響を考慮するのなら、身体全体を左右・上下・前後・回転・回旋いろいろくまなく使うほうがより影響あると思うんだよねー。←それってヨガだよね!のやや強引なまとめ