トラウマケアのためのヨガ指導者養成コース

 

先日紹介したトラウマケアのためのヨガについて、代々木アンザーザライトヨガスクールでは米ボストントラウマセンターで提供されるヨガプログラムをヒントに、日本人の特性にあったトラウマケアのためのヨガ指導者養成コースを医師、臨床心理士、ヨガインストラクターが実施してる。

 

(C)UNDER THE LIGHT YOGA SCHOOL 

 

 

次回実施は7/7(日)、詳しくはコチラからどうぞ。

 

私は3月に受講したんだけど、わずか1日のトレーニングにも関わらず北海道や関西方面からの受講者がけっこういて、興味とニーズの高まりを感じた。

 

「トラウマとは?なぜそうなるのか?自律神経とトラウマ、記憶のこと、身体性のこと、マインドフルネスについて」等、様々な要素を学ぶことができる。

 

◆クライアントの体験を思い込みで決めつけない。憶測しない。

安易に病理化しない、反応を「症状」と呼ばない。ふるまいであり現象である。

◆安易に「診断」「病気」「病理」「障害」の観点で話をしない。

◆カウンセリングの目的は「治癒すること」ではなく「トラウマの記憶を自我に統合すること」。つまり、記憶そのものは在ってもいい。消せるものではない。寄り添いながら適応していくことを目標とする。

◆トラウマに支配されてしまった不適応な生活から離脱することが目的。フラッシュバックしても過度に振りまわれないようにする。「このくらいはOKとする」、「これでいい」といった受容を行う。

 

概論に加えて指導演習もやるんだけど、ヨーガ療法についてあまり触れたことのない方達にはアプローチの仕方が新鮮だったみたい。一緒に演習した参加者が「こんなに普段、一般的にやってるヨガのクラスとは違うんだね・・・」と言っていた。

 

 

このトレーニングの課題図書(受講される方は事前に読んでおくのをおすすめ)

トラウマをヨーガで克服する

トラウマをヨーガで克服する

 

 

以下いつもの読後メモ

 

<ベッセル・A・ヴァン・デア・コーク博士「はじめに」より抜粋>

◆ヨーガは、「トラウマの刷り込みを克服するためには、身体感覚を味方につけることが不可欠である」という我々の理解の主要な礎となった。

◆トラウマに関連づけられた感覚の再現は、外部環境から取り込んだものに反応して起こるだけでなく、われわれ自身の体の深いところにある感覚によっても引き起こされるのである。

◆トラウマを負うことでもっとも難しいと思われるのは、内に住み着いている<引き金>をどうするかということである。

◆危害、悲惨、激怒、あるいは恐怖の先入観は、それ自体が自傷行為なのである。



<第1章「体を取り戻す」より抜粋抜粋>

◆対人関係や暴力に加えてトラウマには、事故・病気・医療行為・愛する人の死・自然災害、その他多くのタイプがある。これらすべての外傷経験に共通する特徴は、“身体的・情緒的・あるいは精神的(三者全てこともある)安寧が何らかの形で脅かされる”というものである。

◆トラウマとはまさに“自分の体のコントロールを失うプロセス”である。



<第2章「トラウマティック・ストレス」より抜粋>

◆トラウマ治療の3つのステージは、①安定化と症状の軽減、②外傷的記憶の確認と修正、③再統合と復帰、である。

◆生死にかかわるかもしれない状況に直面したとき、体のサバイバル・システムにギアが入る。われわれは危険から逃れるために“戦う・逃げる・すくむ(凍結する)・屈服する”など、いろいろなやり方で反応する。サバイバル反応の活性化は体の二つの主要な仕組みから来るもので、それは自律神経系と内分泌系である。

◆体の中で起こる、脅威に対する反応システムのこのような生理学的変化は、体の過覚醒や低覚醒といったトラウマ性の症状として現れる。

過覚醒の症状には、不安や恐れ、侵襲的な記憶、誘発反応、集中困難、悪夢、過剰警戒などがある。

低覚醒の症状としては、無感情、引きこもり、過睡眠、疲労感と低エネルギー、解離などが挙げられる。

◆トラウマは、犠牲者から力とコントロールの感覚を奪う。回復の指針はそれらの感覚を取り戻すことである。 ―ジュディス・ハーマン

◆従来のセラピーの多くは、“認識によって”つまり「トップダウン」で治療にアプローチしてきたが、ヨーガベースの治療は「ボトムアップ」の方法を用い、肉体的な経験を足がかりとしてその人の内面生活へと向かうのである。

◆ヨーガベースの医療のような身体指向のセラピーは、肉体レベルにつなげることを優先し、それを入り口として情緒・認識へと進むのである。



<第3章「ヨーガ」より抜粋>

◆トラウマ・サバイバーが安心して、効果的で霊性さえも養うようなプラクティスをするのに、「グル」や教義は必要ではない。

◆ヨーガにいろいろな捉え方があるとするなら、次のように言う事も妥当だろう。「ヨーガとは結局、実践者それぞれの身体的・感情的・精神的ニーズに合わせることのできるプラクティスあるいはその集合物である」。



<第4章「トラウマ・センシティブ・ヨーガ」より抜粋>

◆われわれは、トラウマを持つ人のためのヨーガにとって特に大切なものとして浮かび上がってきた4つの主要なテーマを確認した。それは、「<今この瞬間>を経験すること」、「選択すること」、「有効な行動をとること」、「リズムをつくること」である。

◆われわれは。「<今この瞬間>の経験」とは「身体的なもの、体に基づくもの」でなければならず、知的あるいは観念的なものではないと考えている。



<第6章「医療者、心理セラピストのみなさんへ」より抜粋>

◆トラウマ治療におけるヨーガベースのエクササイズには共有の目標がある。
①<今この瞬間>に焦点を合わせること
②マインドフルネス(<今この瞬間>に気付きを向け続けること)のスキルを向上させること
③“知ろう”とする気持ちを強くして感覚的経験に耐える力を養うこと
④自分の体との関係を変化させること
⑤センタリング(中心を見つけること)
⑥グラウンディング(地に足を着けること)
⑦感情調整のスキルを築くこと
⑧選択を実行すること
⑨経験のさまざまな側面を統合すること
⑩革新を増すこと
⑪他者とのつながりを築くこと



<第7章「ヨーガ教師のみなさんへ」より抜粋>

◆トラウマセンターのヨーガプログラムでわれわれが使う言葉の基本的な型は二通りあり、それらは「探求の言葉」と「促進の言葉」である。命令は最小限にとどめ、できる限り「推奨」に方向転換した方がよい。

◆ヨーガクラスでは解離が頻繁におこることを覚えておこう。<引き金>は引かれる。それは避けることができない。

◆生徒たちが<何とか耐えられそうな苦痛>に耐えようとしてみることで、経験に対する<耐性の窓>が広がる。この努力を続けていると、やがて彼らは不快だったり苦痛だったりする感情や身体感覚を、その場ですぐ遮断したり、何か他のことに自分を向かわせることで食い止めようとするのではなく、柔軟に受け止めることができるようになる。不快な感情や身体感覚は、われわれが何を必要としており、何がわれわれにとって好ましくないのかを知るための情報源であることが多い。そうした感覚経験への耐久力を築くことにより、やがて生徒たちは、より強い確信をもって<自分にとって好ましくないものを制限する>という経験をし、より素晴らしいセルフケアができるようになるのである。

 

最後の抜粋箇所は、トラウマアプローチに限らず全てにおけるテーマだなぁ、と。

 

感覚や感情や身体感覚における「なんか気持ちワルさ」、「白黒ハッキリしなさ」、「漠然としたモヤモヤ」といった事象への耐性をつける。居心地の悪さを受け容れる。うつろいを、グラデーションをみつめる。煩悩をも抱きしめて生き続ける。きっとそーゆーことなんだろうな。