音楽を聴いて怖いと思った
わたしの部屋はとにかく古いんだけど、窓が大きくて、今日のような月夜の晩は部屋からお月見ができるのがとても気に入ってる。
カーテンも閉めず電気もつけず月明かりの下で何をするかと言えば、猫をなでたりヨガをしたり音楽を聴いたり・・・
でまあ、月といえばベートーベンの月光ソナタとか、
ドビュッシーの「月の光」とか定番じゃないですか。聴くじゃないですか。
Debussy Claire de Lune ドビュッシー「月の光」 ピアノ - YouTube
つらつら~と音楽を聴いてたらある昔の出来事を思い出したので、雑記として暗がりの中で(電気つけりゃいいんだけど)ブログに書こうと思います。
わたしは中学までエレクトーンを習ってて(エレクトーンが流行ってたんですね)、レッスンは先生の家に通ってたんだけど、ある日出かけたら先生がいなかった。
応対してくれた先生のお父さんは、「練習でもして待ってて。ちょっと連絡とるから。」と先に部屋に通してくれた。
わたしはぜんぜん真面目に練習してなかったので、「きょうはレッスンなくなればいいのに」とソファに座ってたら、先生のお父さんが紅茶と菓子パンを持ってきてくれた。テーブルの上を片付けながら「いま連絡とってるから」と。
部屋にはアップライトピアノとエレクトーンが1台ずつ、あと大きな本棚とソファとテーブル。ステレオとスピーカーも置いてあって、これはたぶんこのお父さんのものだったんだと思う。
で、きっとわたしが来るまでここでお父さんがくつろいでたんだろうなーと。本や新聞や湯呑やメガネなんかでテーブルが雑多になってたから。
菓子パンを食べながらテーブルの端に寄せられた金髪ガイジンの女の人の写真(レコードだかCDだかのジャケ)をボーッと見てたら、「知ってる?」と聞かれた。
「カーペンターズの人ですか?」とわたしは答えた。
「はずれ。ちょっとだけ聴いてみる?」とお父さんは金髪ガイジンの女の人の曲をステレオでかけてくれた。
・・・・・・・
ズガジャーーーーーーン!!
????!!!!
なになになになに?
カーペンターズ的な感じを想像していたわたしは、カーペンターズじゃないどころか、そのナナメ上のはるか上空をいく音にびっくり!覚えてるのは、菓子パンをギュッと握ってしまったこと。「音デカイ!」と思ったこと。
で、正解はこの曲でした。
エルガー:Vc協奏曲:デュプレ(Vc):バルビローリ/LSO - YouTube
途中(2分すぎから3分あたりだったと思う)、あまりの衝撃に心臓がドキドキして胸が苦しくなって、泣きたいような悲しいような、とにかくなんだか怖くなって震えがきた。鳥肌が立った。 ※ヘッドホンでそのあたりをぜひ聴いてみてください。
「カーペンターズじゃなかったね。」とお父さんはのんきに言って曲を止めた。
なになになに怖い怖い怖い怖いーーーーー
ひたすらドキドキバクバクして、パンをギュッと握りしめ肌に粟立てて硬直した。なんか怖かった。なんだこれ、と。
幼少からピアノやエレクトーンを習い、吹奏楽ではトランペットをやり、小学生でビートルズデビューし、この頃すでにギターに興味が湧いてた当時のわたしは「大人な音楽たしなんじゃってマスッ!」と生意気をかます早熟こじらせ系女子で、「ジャニスジョプリンが憧れですわ★」みたいなトンガリな自分に酔いしれてたんですが、どんな曲を聴いても「怖い」と思った記憶はなく、この経験はインパクト大だったわけ。
もちろんクラシックも聴いたことはあったんだけど、バッハやモーツァルトといった古典やバロックが中心で、『ジャジャジャ・ジャーーーーン』とか『お父さーん魔王が来るよー』辺りを学校で習う頃にはもう「は~クラシックって退屈ざんすね~皆さんロックってご存じ?」などと斜に構えて友人らにアピって悦に入ってたんで、「まさかクラシックに怖がらせられるとは・・・」とビビッたんでしょうね。油断したってゆーか。
その後「はーごめんねー」と先生が帰ってきて、結局レッスンはやったんだろうけど記憶がない(パンは食べたんだっけか?)。
数年後に、「バイオリンだかなんだかの弦楽器で金髪の女の人で・・・」っておぼつかないヒントでレコード屋の人が見つけてくれたのは、28歳で不治の病にかかって第一線を退き、42歳の若さで亡くなった天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュプレさん。
映画化されるほど演奏も、そして生き様も稀有な女性だった(映画も良かった)。
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久しぶりにこの曲を聴いて、中学生の頃に強烈に感じた怖さはもはやないけれど、でも今ならぴったりの表現ができる。
あれはきっと、音楽を通して味わった
「畏怖する」という感覚
だったんだろうなー、と。
※作曲者のエルガーさんは、ルンルンな「愛の挨拶」や「威風堂々」が有名。
Elgar - Salut D'Amour ( Love Greeting ) - YouTube