いつも晴れてる

「えー、機長です。シートベルトの着用サインは消えましたが、この後もところどころ大気の不安定な箇所を通過するため揺れが予想されます。座席にお座りの際はシートベルトをお締めください。なお飛行には影響ございません。」

年末、福岡へ向かった日の東京は曇っていて風も強かった。飛行機はそこそこ揺れ、窓側の席のわたしはぶあつい雲の中を飛行する様子をぼんやり眺めてた。

「えー、福岡空港への到着は〇時〇分ごろを予定しています。福岡の天候は雨、気温は〇度のようです。」

福岡も雨か･･･と思っていたら視界は突然真っ青に。 

「えー、本機はただいま〇〇上空を飛行中です。（少し間をおいて）地上の天候に関わらず上空はいつも晴れております。着陸態勢に入る束の間ではありますが、空の景色をお楽しみください。本日も〇〇をご利用いただきありがとうございました。」

雲を突き抜けて広がったまぶしすぎる空の青さと、やや滑舌の悪い機長のいかしたアドリブ（たぶん）がやけに印象に残った。そうか、空はいつも晴れてるんだ･･･。

到着した福岡はどんより冷たい雨で、東京と同じグレーの景色。でもずっと上に青い空が在るのをわたしはさっき見て知っている。

福岡の上空も東京の上空もどっかの国の上空も、海や山や砂漠の上空も、こっちがどうだろうと関係なく、誰の上空もぜんぶいつも、

空はいつも晴れております。