ヨガを科学する

 

帯のコピー、『あなたのヨガ、だいじょうぶ?』がやけに目立つこの本は、今年2月出版の比較的新しい本。

 

ヨガを科学する: その効用と危険に迫る科学的アプローチ

ヨガを科学する: その効用と危険に迫る科学的アプローチ

 

ピューリッツァー賞を2度受賞したヨガ歴40年!の著者が、ヨガの効用と危険に科学的にアプローチした内容。

 

巻頭にヨガの主要人物一覧、ヨガに関するコンパクトでわかりやすい年表、アシュタンガやアイアンガー、クリパルといったスタイルの説明があり、以下のように続く。

  

・プロローグ
1.ヨガで健康になれるのか?
2.ヨガでダイエットはできるのか?
3.ヨガで気分はリフレッシュするのか?
4.ヨガで損傷のリスクは高いのか?
5.ヨガによる治癒は可能なのか?
6.ヨガで性的能力は向上するのか?
7.ヨガで芸術的才能は開花するのか?
・エピローグ

 

 

何をいまさら・・・

みんな認めてるじゃん・・・

 

と思いましたか?

 

私は「何をいまさら」というような事実(とされているもの)、意見、風潮、常識について、「でも本当にそうなんだっけ?何をもってそうだと言えるんだっけ??」と疑問を持つ姿勢はけっこう好き。自分のアタマで考えたいなぁと思うタチのせいかも。

 

手に取ってすぐ、冒頭の引用文に吹きだしてしまった。 

 

これほど謎に包まれ、
誤りを指摘される心配なく
好きなことを書ける分野はない。

ー I・K・タマニ(インドの学者兼科学者)
ヨガの曖昧さについて

 

 

それ最初に言っちゃいますかw

皮肉なのか自戒なのか、なんの前フリですか?ってゆーね。

 

額面通り受け取っちゃうと、「ヨガを小バカにするのか!許せん!」と原理主義なヨギ・ヨギーニはヘソを曲げちゃうかもしれない(現に私のヨガ友は「読む気もしない」と言ってた)。

 

でもそうは言っても著者は一流のジャーナリストさん。あらゆるエビデンスやデータといったファクトを集め、文献をさらい、関係者にインタビューをしてできるだけフラットにアプローチしようと試みていて、ここできっちり冒頭の前フリが効いてくる。

 

つまり、「ヨガは曖昧だから好きな事を自由に書けるんだぜ!」と先手で皮肉をかましておきながら「でもオレはそうはしないぜ!」という姿勢を際立たせている。

 

 

◆なぜヨガには効果を正確に確認し、品質を保持するための管理団体がないのか?

◆ケガや悪影響が「事実として在る」にも関わらず明るみにされないのはなぜか?

◆翻って、それが「ヨガの確かな効果とその普及」の妨げになってるのではないか?

 

 

様々な角度から分析し、検証し、考察をしていて、ただ残念ながらものによってはデータのサンプル数の少なさが気になるけれど、そこは著者も言ってるように「ヨガを科学的に分析するアプローチ」はまだ始まったばかり。これからに期待でしょうね。

 

なので、『過渡期におけるいちジャーナリストの(でもヨガ歴40年の練習生の)考察』と割り切って読むのがおすすめかな。「ヨガでの損傷のリスクは高いのか?」の部分は、指導される立場の方はひとつの考察として目を通されるといいかもしれない。

 

ワイドショー的な暴露ネタっぽい内容もあるので、センセーショナル!と感じる人もいるかも。読み物としては大変おもしろい内容です。

 

あと、ビクラム・チョードリー氏(ビクラムヨガの創始者)への揶揄が若干強めな気がしたかな(笑)。まあビクラム氏はなんといっても現代のヨガ界をリードするスターであり、ビジネスパーソンとしても有能な方なので、なにかと矢面に立つのは仕方ないのかもしれないね。

 

疑い過ぎず、信じすぎず、「ひとつの意見」として向き合って、自分の考えを確認するのにいいテキストかな。実践することでしか意見も考えもでてこないし、ある程度続けるしかないしね。

 

ちなみに、ある程度続けるには「続ける」しかないです。はい。