正しさよりも楽しさを

 

『正しい人生はもうやめた』と

久しぶりに会った友人が言った。

 

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彼女は3姉妹の長女として生まれた

優しく面倒見のいいお姉ちゃん。

 

家の手伝いも部活も勉強も頑張り

国立大に進学し、

 

家庭教師のアルバイトに励み

貯めたお金で世界中を旅行し、

 

商社の総合職に就職

若い恋愛も苦い恋愛も一通り経験して結婚。

働きながら妊活をしていた。

 

『よくある人生、小説なら誰も読まない』

と彼女は言い、

 

『帯の推薦文に困るなぁ(笑)』とわたしも言う。

 

妊活という、思うように運ばない

意志や努力でコントロールできない状況の中

彼女は少しずつバランスを失っていく。

 

治療優先で仕事の案件規模を縮小したが

先行きが見えず、キャリアプランも見えず、

かさむ治療費や精神面の不安定さから

夫婦中はだんだん微妙に。

 

そんな夫婦中を取り持つエンジェルとして

ウザギをペットとして迎え入れる。

 

が、先天性の疾患なのか夫婦の不注意なのか

迎え入れて半年でウサギは突然死する。

 

罪悪感、後悔、悲しみ、

自責とそれ以上に生まれる他責(=旦那)

 

そんな思いが状況をひとつまた進める。

 

何もかもうまくいかない・・・

ちゃんとしてるのに・・・

努力してるのに・・・

 

仕事もそこそこ。

ってかもうキャリアを左右するような

大型案件にはアサインされなくなったし、

そんな欲望もなくなってしまった。

 

家では旦那とつまらない喧嘩、冷たい空気、

なるべく外出していたい。

 

元来酒好き&酒豪の彼女は

最後の治療後に酒を解禁し

大酒をあおりはじめ、

旦那以外とのセックスも経験。

 

『このドラマ観たことあるわ』とわたし。

『視聴率ひとケタ台のね(笑)』と彼女。

 

荒れた状態が1年半程続き、

したたかに酔って帰宅中の深夜、近所で、

「ダメだ、吐きたい・・・」と大ピンチに!

 

吐きたい

ゲロ吐く

家までもたん

 

意を決して?植え込みの脇にしゃがんだら

ザザッ!と動くもの…

 

それは一匹の猫。

 

「ああああ猫~~~かわいい~おいで~」と

「オエエエエエ!!!!!」が

同時進行。

 

「おいでえええぇええぇぇオエエエエエ」

 

『吐きの勢いにビビって逃げんだよね、猫』

『そら逃げるわ(笑)迷惑〜何してくれてんの!』

 

吐いたら復活タイプの彼女は常識人でもあるので

近くの自販機で水を買い

汚してしまった植え込みやその周りを水で流し

ボーッと水を飲んでたら猫がまた姿を現した。

 

心配して戻ったかのように(いや、それはない)

彼女を励ますかのように(いや、それもない)

老師が猫の姿で現れたかのうように(なんでやねん)

 

都合のいい猫の擬人化に酔いも手伝って

その場で彼女は大号泣!

 

吐いちゃってみっともない

服も化粧もぐちゃぐちゃで恥ずかしい

こんなに酔ったら旦那にまた軽蔑される

 

うまくいかなくて悔しい

わからなすぎて悲しい

 

楽しくない

なんにも楽しくない

楽しくない楽しくない楽しくないーーーーー!

 

足元にはゲロ(流したとはいえ)、

ビビりつつ傍をウロつく猫(変な人間やな)、

酔って深夜の路上で感情を大爆発させる40代オンナ。

 

で、猫を拾って帰って家族に迎えるとか、

その猫が様々な幸運をもたらしたとか、

「どうしました?」と(警察じゃなく)

声をかけられ運命の出会い!とか、

 

そういった展開はナシ!ナッシング! 

一通りボーっとして帰って寝たそうな。

 

帰る頃はもう猫の姿はなかったらしい。

 

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『わたしは「正しい人生」を望んできたんだけど

もうすごく疲れたしアホらしくなった。

 

これから残りは「楽しい人生」「楽しい生き方」

しかしたくない。楽しくすることに決めた。』

 

と彼女は言った。

 

旦那とは別居中で、離婚手続きを進めてるらしい。

両親や姉妹らには実家で暮らせ!と強要されてる

そうだが『長女だからってその役目はイヤ』と

断ったそう。

 

落ち着いたら日本中の酒蔵や海外のワイナリーを

巡り、イギリスのシングルモルトの聖地にも

でかけるらしい。

 

あとタトゥーも入れたいらしいので

その前にそこそこ良い温泉に行こう!と

約束した。

 

彼女の手帳には

「TO DO」および「TO BE」のリストが

たくさん書いてあった。

 

花火職人

 

って謎のワードも書きなぐってあったけど(笑)

 

誰かをガッカリさせたり、非難されたり、

人が離れたり嫌われたりもするだろうけど、

 

もう「正しい生き方」ではなく

楽しいと思える生き方を選んでいこう。

 

 

 

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